夏越しの鑑賞

仕事で京都に行きました。ちょうど夏越しの祓いの時期なのでインターから一番近い平安神宮で茅の輪をくぐろうと寄ってみたら、隣の近代美術館で、鏑木清方展をやっていました。伊東深水とも上村松園とも違う幻想的な美人画を描いた日本画家。あの「築地明石町」を見られて良かったです。

本でしか見た事がなかったけれど、色無地に黒羽織を着ていると思っていたら、小紋だった。しかも単衣。袖口を見れば、単衣で裏も染まっている様に描かれているから、両面染めの長板中形か?綿なら素足に下駄というのも現代でも有り得る。襦袢も着ていないし。でも、この気品ある雰囲気と、上流階級育ちの清方がモデルに着せたのは、やはり絹の小紋であろう。両面染めの江戸小紋か、臈纈、絞りかも。戦前は今とは比べ様もない位、超絶技巧の職人がたくさんいただろうから。

不自然なのは、黒の紋付羽織。羽織の襟や身八ツ口に肩裏の紅絹の赤が覗いているから袷の羽織か?身八ツ口から覗くのは赤い帯揚ようにも見える。足元にある朝顔と、薄靄に霞む舟がバックに描かれているから晩夏の明け方か。昔は温暖化じゃなかったから、晩夏でも早朝の外は寒くて、袷の羽織をひっかけたのかも。

しかし、なぜ紋付か?場所は築地の海辺。対岸の深川で、男の様に黒の紋付羽織を着て、素足に襦袢を着ないで着物を着る素袷という着方をして、粋を看板にしていた辰巳芸者の末裔なのか。だから紋付羽織が手の届くところにあったのか。それとも明治後期から大正にかけての自由な着こなしの中の流行りだったのかも。早朝に何かを探しているようにも見え、色々と想像を膨らませる絵です。

この「築地明石町」以外にも見応えのある作品が盛りだくさん。機会があったらもう一度見たいです。おすすめは「明治時世粧・あかし・すきや」。夏物の着物から下に着ている鮮やかな襦袢が微妙に透けている状態が見事に描かれていて、観察眼と画力に関心すると共に着物好きには生地の質感までわかる様な楽しい作品です。

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