一寸の差は大

名古屋帯には、八寸名古屋帯と九寸名古屋帯がございます。どちらも、同じ名古屋帯で、仕立て上がってしまえば見た目はほぼ同じ、締め方も同じです。

どこが違うかというと、仕立てをする前の生地の幅が、八寸(約30cm)と九寸(約34cm)であり、1寸(3.788cm)違います。この違いの理由は仕立て方にあります。

八寸は帯芯を使わずに仕立てます。九寸は帯芯を入れて仕立てるので、余分の1寸分は、縫い代に使われます。

八寸は帯芯がない分、生地に強度が必要で、九寸よりも生地が厚く強い織物ですが、九寸は羽二重などの薄い生地でも、芯があるので大丈夫です

こらから暑くなると、「九寸より八寸のほうがいい」という声をよく聞きます。芯がない分、熱がお腹周りにこもりにくい。ということと思われます。

単衣や夏向きの八寸帯は、織組織自体も風通りのよいものになっているのでなおさらです。1寸は「ちょっと」という読み方もされますが、この差は大きいのです。

帯を探されるときには、八寸か九寸かにも気をつけてみてください。

写真は浴衣です。レトロな感じが楽しめます。

冷感襦袢


暑いです。男の着物にも、衿のそらしと、袖付けの身八口が欲しい今日この頃です。

さて、着物の暑さ対策が話題にのぼる時期でございます。着物に関していえば、冷感があるとか、吸湿性があるとかいう化学繊維の新素材が毎年のように登場しても、麻に勝るものはない。というのが私の見解です。天然繊維贔屓も若干ありますが、自分の体験だけでなく、お客様からも同様のご意見をお聞きします。

麻の着物が着られるようになる今月下旬が待ち遠しいのであります。なぜ、今月下旬かというと、やはり麻の着物は盛夏ものという感じがするので、本来は7月からなのでしょうが、少し早めならいいのではということで、6月下旬夏至あたりを目安にしております。まあ夏至なら、もう夏ですもんね。

天然繊維にも新素材があって、昨年あたりにできたのが、アイスコットンという冷感のある綿素材です。これを着物や襦袢に採用した製品があり、昨年は着物を試して、良い感じだったので、今年は襦袢を試しております。綿の糸の撚りを強くして、ケバを極力少なくして、保温性をカットした素材です。

麻とは違うけれど、冷感があり、麻よりも柔らかく薄い感触です。値段が麻とほぼ同じですが、実際、どっちが涼しいのか?着てみると、やはり冷感は麻の方があると感じました。でも麻よりも柔らかいのでシワになりにくいです。麻の襦袢は何回か着るとシワシワになって、アイロンがけが必須ですが、アイスコットンは、それほどシワが気になりません。柔らいので、麻に比べると若干、裾さばきが悪いかな?と思いきや、そうでもない。

というわけで、涼感襦袢のイチオシは麻ですが、シワが気になるという方には、アイスコットンもおすすめです。アイスコットン襦袢の追加情報:普通の襦袢生地よりも広幅なので、広幅の麻に比べると安く、広幅を使わなければならない裄の長い方にはお得です。それと、不思議な事に、この襦袢生地は、袖無双に仕立ることができるだけの長さがあります。(メーカーは、特別な考えはない様子)なので、単衣の袖分が余り、嘘つき襦袢が作れます。

写真は芭蕉、ピーニャの糸で織り上げた夏の帯。帯にも暑さ対策がございます。

ショーマン

大谷選手が活躍しております。彼の出番をショータイムというそうですが、彼はまさにショーマン。でも、私が言いたいのは同じショーマンでも、小満です。二十四節気のひとつ。太陽黄経が60度になったとき、それは昨日の深夜でした。で、小満を過ぎたころから、春繭になるためのお蚕さんが、桑の葉をワシワシと元気よく食べ始めると言われております。養蚕農家さんは忙しさの真っ只中にあることでしょう。絹生産は農業です。休みなく桑の葉を食べるお蚕さんのために桑の葉の収穫やら蚕の周りのお掃除など、きつく、きたなく、くさい作業が続きます。そんな重労働のおかげで、我々が涼しい顔をして着物を着ているわけで、養蚕農家の方には感謝しかありません。今日は上弦の月、来週の火曜日の満月に向けて、月が満ちていき、お蚕さんも丸々と大きくなっていくことでしょう。空に丸々のお月様、その下で雨音のように聞こえるというお蚕さんが葉っぱを食べる音。思い浮かべるだけで、平和な気分になりますねえ。
呉服は絹が無ければ始まりませんが、日本の養蚕は「風前の灯」状態。そのお話は後日したいと思いす。ショーショーマン、少々待ってくださいませ。