気分はもう単衣

最高気温33度の浜松から38度の京都へ行きました 。着物を着ていくことに躊躇いはなかったものの 若干のセルフ人体実験感を抱きつつ 行ってみれば普通に過ごせました。 着物の蓄冷機能でエアコンの効いた建物を渡り歩き 弱めのエアコンには扇子で対処し 夜の生暖かい風もエアコンで冷えた体には むしろ心地よく楽しめました。が 、やはりホテルに帰って脱いだ襦袢は しっかり汗でボテボテ。 夏の旅には着替えの着物セットは必需です

写真は明治時代に描かれた油絵です。 (それが載っていたチラシです) 京都の賀茂川と高野川が合流する 出町柳のあたりを川の西岸から 見た構図になっています。 大文字山も見えます。 ほとんど建物がなく 今の様子とは全く違う風景です 大文字の送り火もよーく見えたことでしょう

以前子供がこの辺りに住んでいて、 いわゆる鴨川デルタは見慣れた風景で 、小さい絵でしたが目に留まりました

こういう昔の絵をみると 現代はいかに人が多いかと感じます。 これだけ人がいれば地球も暑くなりますわな 。暑いからエアコンのモータを回して もっと暑くしているんだから、 世話はない。 そんなエアコンに頼らないと 着物文化は存続できないのか?

高温の夏から残暑厳しい初秋、 これに対応する着物スタイルは 過去の慣習を捨てて 毎年アップデートしていくことを 余儀なくされております。 もっとも着物文化は 季節に順応して進化してきましたから、 これからも変わっていってよいのであります

とはいえエアコンありきの進化というのも 情けない気はするのですが 、ふんどし一丁で街を歩いていれた 江戸時代様式に回帰することはできないけれど、 いろんな意識の変化と共に行政の変化も必要なのかな

この油絵が展示されていたのは 京セラ美術館の収蔵展で、 京濱ユーザーにも人気の高い 稲垣稔次郎さんの作品展も併催しています。 今月はその稲垣稔次郎作品のプチ展示会を行います 稀少で魅力的な着物と帯を 是非ご覧ください

ポリが暑いワケ

着物や襦袢は染め替えができます。昨今はご家族から譲られたものを仕立て直すというご依頼も多いのですが、シミが多い場合なども染め替えをしたほうがスッキリ綺麗になるので染め替え案件も増えております。

ところが稀に、染め替えしたくてもできないケースがございます。それは化繊が混入している場合です。ポリエステルなどの化繊(化学繊維)は染め替えできません。というか、できないこともないけれど1枚だけやろうとすると、とんでもないお金がかかります。

絹や綿の天然繊維は糸の中をミクロ的にみるとスカスカで、水との親和性が良いのですが、化学繊維は糸は柔くても、その糸の中身はカッチンカッチンのプラスチックで、染料が入り込むすき間はありません。そのため高温高圧の環境を作って染料分子を無理やりプラスチックの分子の中に押し込んでいます。なので特殊な設備で大量に染めないと売りものにならないというわけでございます。

天然繊維は糸の中まで通気性や保湿性があるのに比べ、ポリは見た目は似ていてもその正体はペットボトルと同じですから暑いに決まっているということなんですね。

ただし、ユニクロのエアリズムのようなものはポリエステルですが、糸を細くして糸と糸の間に毛管現象を発生させて体の汗を吸収、発散させる仕組みでサラッとしているようです。ただ風合いはお好みがわかれるのかなと思います。(私は使った事がございません。天然繊維が好きです)

ちなみに同じ化学繊維のなかでも石油から作られるポリエステルやナイロン、ウレタンは合成繊維といい、これに対して、木材などから作られるレーヨンやアセテートは半天然で再生繊維といって、こちらは比較的暑くないようです。

写真は最近評判の良い、もちろん絹の襦袢地です。サラッ&シャリで気持ちよく、織がしっかりしていて、居敷当てなしでも大丈夫で、その分涼しい。さらに水洗いも可能です。

1枚より2枚が涼しい

先日、恒例の?大相撲名古屋場所に行ってきました。浜松は海風もあり、地理的にもフェーン現象とは縁が薄いので、騒がれているほど暑くないのですが、名古屋は暑そうだし、毎年、名古屋場所は暑い。

それでも、お出掛けは着物です。麻の着物に、麻の襦袢、麻の帯に、麻の羽織。麻ずくし。肌着だけは綿です。エアコンの効いている自宅から炎天下を徒歩10分で駅〜新幹線〜駅ビルのレストラン〜地下鉄〜徒歩10分で名古屋場所が行われているドルフィンズアリーナまでの間は、着物の蓄冷効果があって、暑からず寒からずで快適に移動できました。

ドルフィンズアリーナの会場内のすり鉢状に配置された枡席は狭く、人の熱気と照明で、かつ、今回は1つの枡席に4人で行ったのでさぞかし暑い、狭い、きついと思ったのですが、持参した座椅子と、冷たいビールのおかげか、扇子片手にあおぎつつでしたが、比較的気持ちよく観戦できました。横綱や大関などの欠場があっても、元気な若手が出てきて楽しい場所した。

次の日は、同じような気候だったのですが、素肌に直に綿の浴衣を着ていたら、エアコンの中にいてから少し外にでて水撒きをしただけなのに、滝のような汗をかきました。これはどういうわけなのでしょう。麻の襦袢の吸水、冷感効果がすごいのか、襦袢を着るという気合のせいなのか?

肌着から襦袢、着物に汗がスムーズに移動していって、その間に蒸発する際の気化熱が奪われて涼しく感じるという自然な放熱効果があるのかもしれません。浴衣1枚だと肌に触れているところといないところがあるので、汗をスムーズに吸収できず、肌と浴衣の間の空気が温まりやすくて体感が暑くなるのかもしれません。あくまでも個人的な感想です。