袴の不思議

先日、6月の下旬、甥っ子の結婚式があったのでお江戸まで行ってきました。式は由緒正しきカトリックの教会、披露宴はコットンクラブという「洋」な空間でしたが、もちろん着物です。本来は黒の五ツ紋付でしょうが、それだと格が上がり過ぎてしまうかな?とか他の参加者のいでたちを予想して、単衣の無地に絽の一ツ紋の羽織、絽袴の組み合わせにしました。

袴でゴミゴミした駅を移動するのはよろしくないと思い、袴だけは持って行って教会の待合室の隅で着用しました。袴もボール紙と風呂敷があれば以外にシワにならずコンパクトになるということを発見しました。帰りもコットンクラブで脱いで袴だけをパッケージグするのはものの1分で、快適に旅を終えました。

今回は袴着用時のトイレは小さい方だけでしたが、たまに、大きい方はどおするの?と聞かれます。たまたま、テレビをみていたら、江戸時代の公衆トイレのお話をやっていて、その公衆トイレの浮世絵が紹介されたのですが、窓から覗くトイレ内でしゃがんでいるお侍さんはもちろん上半身しかみえてませんが、腰には袴を着けておられました。

侍の袴も、現代の茶道などの一般的な男袴は行燈型のスカートではなく、馬乗りといって、股の真ん中に仕切りがついていてキュロットスカートの様になっています。こうなると大きい方をする場合、脱がずにできるのか?と思われるのですが、大丈夫です。それは今は忘れられている江戸時代の常識なのですが、褌(フンドシ)です。褌ですと、馬乗り袴でも、袴を脱がずに用がたせます。洋式でももちろん簡単ですが、昔の板に穴のあいただけのトイレのほうがより楽にできるということは想像できます。着流しでも褌との相性は良いので是非お試しを。褌をご希望でしたらお分けします。

業界の闇と着物愛

アマゾンのキンドルのアンリミテッド月額980円は無料のおすすめ本を紹介してくれるんですが、たまに弊社がお世話になっている「きものサロン」なんかもあって、2000円の本とどっちがいいの?と思ってしまいますのと、これは発行部数にカウントされるのか?とか著者への印税はどうなってんのかと疑問に思うのですが、印税は読まれたページ×0.5円というから300ページくらいの本なら1冊150円になるので、紙の本の印税が定価の10%というから、そこそこ貰えるんだと思いつつ、最近のおすすめで「いつも着物でいたい」というのがありました。着付け教室のスタッフを経てリサイクル着物屋さんとして独立した方が著者ですが、着付け教室の厳しい現実を綴っておられます。着付け教室は教室という看板をかかげた呉服屋さんということがよくわかります。

普通の呉服屋との違いは、商品を自分たちで仕入れるのではなく、?な問屋からの?な商品を問屋のいわれるままに売ってしまっているのではないかといわれています。しかも販売員は教室の先生ですからお客さんも断りにくい。よくできたシステムです。

京濱は毎月京都に行って染め屋さん、織屋さん、問屋さんを回っています。京濱オリジナルを作ってもらうためと、奇跡の1点を探すため。奇跡の1点というのは、日本海の海岸を歩いて翡翠を見つける様な(やった事ないけど)、東北の山中の川砂を篩いにかけて砂金を探す様な(やった事ないけど)宝探しです。職人さんやメーカーは様々な動機でもの作りをしていて、世の中にないオリジナルを作ろうとか、超絶技巧を見てほしいとか、今の時代はこういうのを着てほしいとか、ならいいんだけど、売れればいいとか、中には粗悪な素材でいい加減に作っているなと思われるものもあったりします。そんな玉石混合の中から、色、柄、素材、風合い、値段など、京濱好みで、本当にお金を出してお客様に買っていただける価値のあるものを仕入れるために、既存の商品にはそれがなければ京濱オリジナルをつくるために、京濱という呉服屋の存在価値があるという思いで呉服屋をやっています。

まだインバネス

5月のはじめにお仕事で京都に行きました。着物も襦袢も羽織もオール単衣。昼間、車に乗っているときは羽織を脱いでいても窓を全開にしないと暑かったです。それでも夜になると羽織の上から袷のインバネスコートを羽織らないと寒いという寒暖差の激しい1日でした。そういえば夕方雨も降ったからなおさら冷えたのかもしれません。天気予報を確認して夜は10度らしいということでインバネスを持参したのでよかったです。夜行った焼き鳥屋さんからホテルまでぶらぶらと1km以上ほろ酔い歩きで帰れました。

着物は、襦袢と着物までは着てしまったら脱ぐことはできないです。洋服だったら脱ぐことを前提にして、シャツの下にTシャツとか着ておけば暑くてたまらんかったらTシャツになることもできるけれど、着物はそうはいかないので、襦袢と着物を着て、その日の一番暑い気温に合わしておくのが理想なのかもしれません。あとは羽織って温度調整するしかないので、羽織やコートも薄物、単衣、袷、肉厚の袷と各種揃えておくと、とっても心強いです。今回着たインバネスコートは袷だけれども真冬用じゃなくて早春&晩秋用のサラッとしたウールで、真冬用は厚手のカシミヤのトンビでそれにプラスしてマフラーで完全防寒できます。

メモのような日記に時々明け方の予想気温を記録しているのですが、今年は昨年よりも明け方の気温が低いです。それでも夏日の報道があちこちでされるのをみると、きっと昨年よりも気温差が激しいんだろうと想像するのですが、毎日長時間爆睡してしまうのは年のせいというよりこの気候のせいなのかもしれないと言い訳しつつ、年のせいもあるかもと、体をねぎらわねばと今日も睡眠が楽しみな今日このごろです。

お仕事の後はカキツバタで有名な太田神社に行きました。上賀茂神社のすぐ近くにある小さな社ですが静かな木々の中で観光客も少なく、ここにしかいないというカエルのハスキーボイスなゲコゲコの声をききながら癒される空間を楽しみました。イングレスというゲームのポイントにもなっていたので、レゾネータ8を奉納させて頂きました。(知らない人には何のこと判りません。すみません)数年前にいったときには、まだ早いかなという感じの咲きかげんだったカキツバタも温暖化のせいか満開の見頃で堪能いたしました。それから車で5分くらいのところにある今宮神社で名物の炙り餅を食べて帰りました。きなこと味噌の味付けが美味しかったです。