着物に対する意識にも色々とございますが、その中でも、寸法のことをお話しします。着物は洋服と違って寸法の自由度が高い(この表現があっているかどうか自信がないですが)ので、多少大きくても、小さくても着られます。女性の場合は特に「おはしょり」があるので、そこで身丈も身幅も調整できる、ある意味でエコなアイテムです。
しかし、寸法があっていないとオカシイ部分もございます。それが、袖丈と袖巾と裄(ゆき)です。体に合っているというのではなく、もちろん、合っていないといけませんが、合わせる必要があるのは、着物と襦袢、着物と羽織、羽織とコート、、裄も袖巾も襦袢<着物<羽織<コートの順で長くしなければなりません。しかもそれぞれの差は7mmから1cmに収まります。袖丈の場合は襦袢<着物>=羽織=コートと裄とはちょっと違いますが、ほとんど同じ長さでなければなりません。
明治・大正時代の美人画の世界では着物から真っ赤な襦袢がドーンと出ていますが、その時代の仕立てにもそんな決まりはなく、あれはファンタジーです(多分)。というわけで、その寸法について意識されている方が意外と少ないのですが、実際は、呉服屋がちゃんとやっているので自然と合ってしかるべきものであり、お客様が意識されるところではありません。
なのですが、時々持ち込まれる他店製のお着物セット。同じお店で買われたというのに、どれをとっても裄と袖丈がバラバラというケースが少なからず御座います。なんらかの理由があったにしても、その説明がなされていないという事も多いです。この呉服屋さんの罪は重いと思います。そのほかに先生と呼ばれる方々にも同罪の方々がいらっしゃいます。襦袢も着物も袖丈がバラバラでも、あまり気になされない。純粋な生徒さんは、それがあたりまえだと思ってしまいます。寸法がしっかりしていてこその美しい着姿という事実に気ずかぬまま着物を着続けてしまうという構図になるのです。最低限の寸法リテラシーは抑えていただきたいものです。