重衿ガイドライン

重衿(伊達衿)は、着物の衿の内側に付けるもので、2枚でも3枚でも良いのですが、これを付けることによって華やかさが増すアイテムです。主に振袖や訪問着などの礼装に使います。その起源は、かつての重ね着のなごりともいわれています。

江戸時代の浮世絵などには、確かに何枚も着物を重ねて着ている人を見ることができます。それだけ寒かったのでしょうか?でも、たくさん重ねているわりに、足が素足だったりして、オカシイです。あの時代の人は着物に慣れていて足元の冷えには強かったのでしょう。

で、その重ね着、襦袢と表の着物の間に着る着物にも、暗黙の決まりがあって、表の着物が正装のときには、白絹の無地で、略礼装のときには小紋や縞だったといわれています。

その重ね着の簡略版が、留袖に使われる比翼仕立というもので、衿と裾周り、袖口に重ね着をしている様に見えるものを白生地で作って付けます。そのさらに簡略版が重衿(伊達襟)というわけです。

ですから、重ね着をする必要のない季節には、伊達襟は付けません。でも重衿は既に、装飾的意味が強く、また、お祝い事が重なるという縁起物でもあり、これを付けているから暑いわけでもない(見た目が暑苦しいという場合はあるかも)ので、単衣ものには付けていけないとう事もなく、また、袷のものには絶対必要かというと、スッキリが好みなら無くてもよいのです。

「4月から9月までは重衿はしないのが基本ですが、お好みで」というのが、京濱の重衿ガイドラインです。

鏡像異性体

最近、奇妙な現象に立て続けに遭遇しました。
お客様にお納めしたお着物(付下)、お召しになったときのお写真を見せて頂いたのですが、どこかおかしい。おかしいところは、右左逆!いわゆる左前。付下なので、胸の柄も前身頃の柄もしっかり出ているので、右左を間違えて着て(着せられて)しまったという事ではない。というのは明らかですし、自撮りしても、そうなることはなく、鏡に写ったところを撮影されたわけでもないので、スマホで何らかの操作をした時にこうなってしまったのか、あるいは、メールかLINEの送信中の事故なのか、理由は判らず仕舞でした。

そんなおり、yahooニュースを見ていたら、猪瀬直樹さんの結婚発表の記事が出ていて、お相手の女性の着物がなんと、これまた右左逆!この着物が小紋なのか、総柄の訪問着なのか判然としなかったのと、並んでいる猪瀬さんの背広のボタンが止めてなく、画像も鮮明でないので、確実なことはわかりませんが、まさか、公の場でそのような着付に誰も気づかないこともないので、これも、画像データ事故なのではないかと思われます。

ときどき、テレビや折込広告の着物のイラストで、左右逆になっているところを発見すると、知らない人が描いているな〜と嗤いますが、リアル写真で見ると、ビックリしちゃいます。フィルムプリントの時代は写真屋さんがネガを逆にセットして、左前になっちゃった事がありましたが、デジタルの時代にも、意外な落とし穴があるものですね。お気をつけください。写真はワザと「逆に」締めた帯〆です。こっちが正しいという方もいらっしゃるようですが、京濱は、こっち派ではありません。

桜と満月

もう4月も終わりです。少し前の話になりますが、「今年は桜の花を長く楽しめた」らしいですね。京都の草木染めに詳しい大先生が曰く、「今年の桜が良かったのは、満月と開花が重なったから」なんだそうです。

樹木は根から水を吸い上げていますが、満月の時には、その吸い上げの力は普段よりも力強く、大地の養分を存分に枝の隅々に行き渡らせることができ、そうして咲いた花には風雨に負けない強く美しい花になるのだそうです。

草木染めに花を使うときには、満月の時に収穫し、根っこを使う時には新月の日に使うのだそうですが、月の潮汐力を考えると、収穫の時間は共に夜ということなのでしょうか、、。奥が深そうです。

草木染めというのは、自然から頂く色というわけですが、大先生によると、近年の科学的な研究では、草木染の色と化学染料の色では同じ色でも、人間は草木染めの色に好感を示すという報告があり、その色を科学的に分析すると、なんと、目に見えないはずの波長領域に違いがあった。というのです。

草木染めも凄いけど、人間の目も凄いというお話です。写真は今月はじめの、京都、円山公園での夜桜とほぼ満月。今日も満月。今夜もどこかで、花の収穫が行われるのでしょうか?