ポリが暑いワケ

着物や襦袢は染め替えができます。昨今はご家族から譲られたものを仕立て直すというご依頼も多いのですが、シミが多い場合なども染め替えをしたほうがスッキリ綺麗になるので染め替え案件も増えております。

ところが稀に、染め替えしたくてもできないケースがございます。それは化繊が混入している場合です。ポリエステルなどの化繊(化学繊維)は染め替えできません。というか、できないこともないけれど1枚だけやろうとすると、とんでもないお金がかかります。

絹や綿の天然繊維は糸の中をミクロ的にみるとスカスカで、水との親和性が良いのですが、化学繊維は糸は柔くても、その糸の中身はカッチンカッチンのプラスチックで、染料が入り込むすき間はありません。そのため高温高圧の環境を作って染料分子を無理やりプラスチックの分子の中に押し込んでいます。なので特殊な設備で大量に染めないと売りものにならないというわけでございます。

天然繊維は糸の中まで通気性や保湿性があるのに比べ、ポリは見た目は似ていてもその正体はペットボトルと同じですから暑いに決まっているということなんですね。

ただし、ユニクロのエアリズムのようなものはポリエステルですが、糸を細くして糸と糸の間に毛管現象を発生させて体の汗を吸収、発散させる仕組みでサラッとしているようです。ただ風合いはお好みがわかれるのかなと思います。(私は使った事がございません。天然繊維が好きです)

ちなみに同じ化学繊維のなかでも石油から作られるポリエステルやナイロン、ウレタンは合成繊維といい、これに対して、木材などから作られるレーヨンやアセテートは半天然で再生繊維といって、こちらは比較的暑くないようです。

写真は最近評判の良い、もちろん絹の襦袢地です。サラッ&シャリで気持ちよく、織がしっかりしていて、居敷当てなしでも大丈夫で、その分涼しい。さらに水洗いも可能です。

1枚より2枚が涼しい

先日、恒例の?大相撲名古屋場所に行ってきました。浜松は海風もあり、地理的にもフェーン現象とは縁が薄いので、騒がれているほど暑くないのですが、名古屋は暑そうだし、毎年、名古屋場所は暑い。

それでも、お出掛けは着物です。麻の着物に、麻の襦袢、麻の帯に、麻の羽織。麻ずくし。肌着だけは綿です。エアコンの効いている自宅から炎天下を徒歩10分で駅〜新幹線〜駅ビルのレストラン〜地下鉄〜徒歩10分で名古屋場所が行われているドルフィンズアリーナまでの間は、着物の蓄冷効果があって、暑からず寒からずで快適に移動できました。

ドルフィンズアリーナの会場内のすり鉢状に配置された枡席は狭く、人の熱気と照明で、かつ、今回は1つの枡席に4人で行ったのでさぞかし暑い、狭い、きついと思ったのですが、持参した座椅子と、冷たいビールのおかげか、扇子片手にあおぎつつでしたが、比較的気持ちよく観戦できました。横綱や大関などの欠場があっても、元気な若手が出てきて楽しい場所した。

次の日は、同じような気候だったのですが、素肌に直に綿の浴衣を着ていたら、エアコンの中にいてから少し外にでて水撒きをしただけなのに、滝のような汗をかきました。これはどういうわけなのでしょう。麻の襦袢の吸水、冷感効果がすごいのか、襦袢を着るという気合のせいなのか?

肌着から襦袢、着物に汗がスムーズに移動していって、その間に蒸発する際の気化熱が奪われて涼しく感じるという自然な放熱効果があるのかもしれません。浴衣1枚だと肌に触れているところといないところがあるので、汗をスムーズに吸収できず、肌と浴衣の間の空気が温まりやすくて体感が暑くなるのかもしれません。あくまでも個人的な感想です。

袴の不思議

先日、6月の下旬、甥っ子の結婚式があったのでお江戸まで行ってきました。式は由緒正しきカトリックの教会、披露宴はコットンクラブという「洋」な空間でしたが、もちろん着物です。本来は黒の五ツ紋付でしょうが、それだと格が上がり過ぎてしまうかな?とか他の参加者のいでたちを予想して、単衣の無地に絽の一ツ紋の羽織、絽袴の組み合わせにしました。

袴でゴミゴミした駅を移動するのはよろしくないと思い、袴だけは持って行って教会の待合室の隅で着用しました。袴もボール紙と風呂敷があれば以外にシワにならずコンパクトになるということを発見しました。帰りもコットンクラブで脱いで袴だけをパッケージグするのはものの1分で、快適に旅を終えました。

今回は袴着用時のトイレは小さい方だけでしたが、たまに、大きい方はどおするの?と聞かれます。たまたま、テレビをみていたら、江戸時代の公衆トイレのお話をやっていて、その公衆トイレの浮世絵が紹介されたのですが、窓から覗くトイレ内でしゃがんでいるお侍さんはもちろん上半身しかみえてませんが、腰には袴を着けておられました。

侍の袴も、現代の茶道などの一般的な男袴は行燈型のスカートではなく、馬乗りといって、股の真ん中に仕切りがついていてキュロットスカートの様になっています。こうなると大きい方をする場合、脱がずにできるのか?と思われるのですが、大丈夫です。それは今は忘れられている江戸時代の常識なのですが、褌(フンドシ)です。褌ですと、馬乗り袴でも、袴を脱がずに用がたせます。洋式でももちろん簡単ですが、昔の板に穴のあいただけのトイレのほうがより楽にできるということは想像できます。着流しでも褌との相性は良いので是非お試しを。褌をご希望でしたらお分けします。